本の虫

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 村上龍「半島を出よ 上」(幻冬舎)

<<   作成日時 : 2006/01/02 16:02   >>

ナイス ブログ気持玉 7 / トラックバック 3 / コメント 2

 村上龍「半島を出よ 上」(幻冬舎)を読了。年末年始で時間があるのだが、なかなか本に集中できない。12月30日から4日かかって、やっと、上巻を読み終えた。

 2011年4月、反乱軍を装った朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の特殊戦部隊員9名が、3万人の観客を人質に福岡ドームを占拠する。
 続く先遣隊500名の到着によって、福岡市は北朝鮮特殊戦部隊の占領下におかれ、首都への飛び火をおそれた政府は、有効な対策を講じられないまま九州を封鎖してしまう。

   この世のすべての人はもともと暴力的な何かの人質なのだが、ほとん
  どの人はそれに気づかない。根本的にはすべての人間が暴力で支配さ
  れているのだが、そのことがわからない。


 この小説を「空想」と笑うのは簡単だが、作者が登場人物に語らせたこの言葉を、もう一度考えてみてほしい。
 たとえば、耐震強度偽装問題が発覚する以前に、自分の住んでいるマンションが、震度5強程度の地震で倒壊すると誰が考えたろうか。通勤列車が脱線し、
100名以上もの方が何の落ち度もなく亡くなってしまうと、誰が想像し得たであろうか。
 日本の政府には、本当の意味での「危機管理」が存在しない。そのことはすなわち、国民が「危機意識」を有していないことを意味する。

   そもそも国民保護法には、住民の中に紛れ込んだテロリストとか、住民
  を巻き込んだ市街戦という想定がなかった。攻撃とか、テロとか、大量破
  壊兵器という言葉はあるが、生身の、肉体を持つ敵の姿をイメージできな
  い法律だった。


 北朝鮮側が認めているだけでも13人の日本人が不法に拉致され、中距離弾道ミサイル・テポドンが日本を飛び越して三陸沖に着弾しても、「喜び組」や「美女応援団」が北朝鮮に対する話題の中心になる国に、我々は住んでいる。

 いや、日本人に危機意識がないのではない。漠然とした不安を抱き、危機に気づきながらも、それらに蓋をし、見ないふりをして日常を過ごしているのだ。

 この小説は、そんな我々の喉もとに、突如として牙をむく「危機」という切っ先を突きつけている。


下巻へ

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 7
ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
村上龍 『半島を出よ』  上 過激で危険な現代の寓話なのだ
冷戦後の仁義なき大競争時代に取り残されたニッポン。この不安と焦燥に満ちた現代を村上流に延長し、危機の構造を戯画化した作品として注目すべき、これは寓話でしょうね。 ...続きを見る
日記風雑読書きなぐり
2006/01/03 15:11
村上龍『半島を出よ』
今さらの感はあるが、村上龍『半島を出よ』幻冬舎 を読んだ。読み始めて非常に興奮し ...続きを見る
岡田昇の研究室
2006/03/31 18:49
???ζ
&& ?&&ζ &dagger; &?&?&?&&&?&?&?&?&&$&??&1952/02/19- &??& Wikipedia &?&?&&??&?&&&&?&&?&???&$&& &&?&?&&ζ&&?&&&&p&?& &&?&?&&ζ&&?&&&?&&?& &&&??? ?&&ζ&&&&&&&&? ?&&ζ&&?8&&&? ?&&ζ&Υ?&&&&... ...続きを見る
PukiWiki/TrackBack 0...
2006/06/08 12:31

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
刺激的なテーマで印象的な作品でした。既成の大枠を取っ払うとこんな見方もありうる。作者のいくつかのメッセージが大切な問題提起をしていました。
よっちゃん
2006/01/03 15:10
コメントありがとうございます。
まだ、下巻を読み始めたばかりですが、日本という組織からはじき出され疎外されてきた「イシハラ」グループが、物語の鍵を握っていそうで、読み進むのが楽しみです。
本の虫
2006/01/05 21:14

コメントする help

ニックネーム
本 文