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熊谷達也「虹色にランドスケープ」(文藝春秋)を読了。バイク乗りたちを主人公にした連作小説集。Z2、CB750、RZ250、カタナ、SR500。私自身も、20年ぐらい前にちょっとだけバイクに乗っていたので、登場するバイクが懐かしい。 車種でぴんと来る人もいるだろうが、青春をバイクとともに過ごし、今もバイクに関わり続けている40代以降の世代を主役に、そこに関わる人々を描いた小説だ。 20年以上勤めた会社をリストラされ、家族の行く末に胸を痛める男性。 父親の死後、冴えないと軽蔑していた父親のバイク乗りの過去を知った息子。 自身の不妊症をきっかけに離婚し、もう結婚すまいと心に決めた男性。 相手にされなかったあこがれの男性から、逃げるように旅に出る若い女性。 不倫相手とのツーリングで事故に遭い、独身をつらぬく美しい女性。 大学時代に理由も知らせず離れていった恋人に、偶然を装って再会した男性。 かつての恋人に思いを寄せながら、配偶者の突然の死に直面した女性。 こうした7つの物語の糸がもつれあい、次第にひとつの物語を織りなしていく。それぞれのサブタイトルに、Violet(紫)からRed(赤)まで虹を構成する色が配され、本書のタイトルにつながっている。 さて、著者は、この作品を通じて何を伝えたかったのだろう。はっきり言えば、私にはよく分からなかった。もしかしたら、これが著者のメッセージなのだろうか。著者は、登場人物のひとりに、こんなふうに言わせている。 「年齢がいってもバイクから降りられない人間は、多かれ少なかれ、どうしても埋められない穴ぼこを心に抱えていてね、それを少しでも埋めようとして、バイクに乗り続けているようなものだ」 かっこよすぎる。これを真に受けて、にわかライダーが急増したらどうするつもりなのか。 しかし、かく言う私も、正直に告白すれば、そんなレベルのライダーだった。「バリバリ伝説」や「あいつとララバイ」を読んで、バイクのかっこよさにあこがれた「にわかライダー」だった。バイクは四輪と違って、立ち止まると倒れてしまうなどとうそぶいたものだ。しかし、その乗り物が持つ危険は、真実のものだった。 そんな、危険と隣り合わせの道具であるバイクと、危険と知りつつ、バイクから離れられない人間との関係を描きたかったのだろうか。 仮にねらいがそうだとしても、残念ながら描けていない。バイクにすがりつかなければ生きていけないほどの切迫感が、登場人物からは感じられないのだ。さらに、主人公が絞り込まれていないことも、物語を分かりづらくしている。 「邂逅の森」で、男と女の、人間と野生との、凄絶で濃密な愛憎を描ききった著者だけに、なおさら残念だ。 ついでに言うと、サブタイトルに付された色から、それぞれの物語を読み取ることも難しい。不要だったのではなかろうか。 |
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8月の読書
鳴海章「ナイト・ダンサー」(講談社) 熊谷達也「虹色にランドスケープ」(文藝春秋) 鳴海章「ニューナンブ」(講談社) モーリアック「テレーズ・デスケルウ」(講談社文芸文庫) ...続きを見る |
本の虫 2006/09/01 08:27 |
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