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夢枕獏「新・餓狼伝 巻ノ一 秘伝菊式編」(FUTABA NOVELS)を読了。「闘い」をテーマにした小説の感想にこんな優しげな眼のライオンで良いのかという疑問はあるものの、これ以外にふさわしいデザインが見あたらなかったのでご了承いただきたい。 さて、この小説、タイトルに「新」と付されていることからも分かるように、旧シリーズが存在する。しかしながら、作者自身も認めるように、主人公・丹波文七の格闘家としての成長を描くという内容は連続しており、なぜ新シリーズになったのか不明だ。 あえて旧シリーズとの違いを見いだすとすれば、旧シリーズが道場破りだったり、野試合だったり、いわばルール無用の闘いが中心であるのに対し、新シリーズは(今のところ)ルールのある公開のリングが舞台だ。 もうひとつ、「秘伝菊式編」というサブタイトルについて、「菊式」や「スクネ流」、「御傍流」などに関するエピソードが冒頭紹介され、どうやら薬を使う暗殺技・暗殺集団を意味するようなのだが、物語が進むにつれ、そうしたエピソードがなおざりにされていく点もいかがかと思う。シリーズの中で、この布石が活かされるよう期待している。 こうした不満もあるけれども、物語は文句なしにおもしろい。バーリ・トゥード・ルールでの、柔道VS忍術、ブラジリアン柔術VSプロレス、空手VSプロレスの闘いが展開されるのだが、意外にもプロレスラーの「凄味」が中心に描かれているのだ。 しかも、登場するプロレスラーのモデルが容易に推定できるところも、古くからのプロレス・ファンとしてはたまらない。たとえば、「カイザー武藤」はジャイアント馬場、斑牛(まだらうし)こと「伊達潮男」は上田馬之助がモデルだろう。 若い読者にぴんと来るかどうか分からないが、モデルとなったプロレスラーたちは、常にショーアップされた「プロレス」を演じ続けてきたレスラーでありながら、セメントにも強いと言われ続けてきたプロレスラーなのだ。そうしたプロレスラーたちが、ショーとしてのプロレスを貫きながら、他の格闘技を圧倒する凄味を見せるのだから、なおさら痛快だ。 主人公の活躍が見られないのは残念だが、次巻に期待したい。 |
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