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help リーダーに追加 RSS 三浦しをん「風が強く吹いている」(新潮社)

<<   作成日時 : 2007/09/09 08:34   >>

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 三浦しをん「風が強く吹いている」(新潮社)を読了。陸上競技経験者は3人だけという素人集団が箱根駅伝をめざし、わずか9ヶ月後に実現させてしまう。少し恥ずかしいのだが、そんな夢のような物語を読みながら、酒の酔いも手伝って、涙が止めどもなくあふれてきてしまった。

 なぜ、「夢のような」と言ったのか。理由は簡単である。長距離走というと、「持久走」と言うくらいで長く走ることが主眼と受け取られがちだが、これは大きな誤解である。テレビだけでマラソンや駅伝を観戦している方は気づいていないかもしれないが、選手たちはものすごいスピードで走り続けているのだ。

 たとえば、男子マラソンの世界記録を見てみよう。4年前に2時間5分を切っているが、秒に換算すると7,500秒。これで42.195キロメートルを走るのだから、100メートルあたり18秒以下、50メートルあたりでは9秒を切っていることになる。皆さんが全力で走った小学校、中学校時代の記録と比較してみたら、このスピードがどんなにすごいかがわかるだろう。
 ちなみに箱根駅伝では、217.9キロメートルを11時間前後で10人が襷をつないで走り抜けるのだ。そのスピードを作者はこう表現している。

 このひとたちはみんな、なんてスピードで走るんだろう。自転車を必死に漕いだときよりも、まだ速いぐらいだ。選手の顔を視認するのがやっとというほど、一瞬で通り過ぎていく。

 ちなみに、登場人物のひとりは、4月の初めに5,000メートル走で33分を越えていたのを、6月末までに17分を切るまでに走力を上げるのだが、1キロ6分を切るのに必死だった中年ジョッガーにはとても信じがたい。

 しかし、不思議なのは、そんな「夢のような」設定の物語であるにもかかわらず、感動が押し寄せてくることなのだ。いや、そんな無謀な挑戦を戦い抜いた10人の物語であるからこその感動であるかもしれない。もっと言えば、無謀な挑戦を次第に「ありうること」と思わせる、そのことが作者の筆力なのかもしれない。

 走る姿がこんなにうつくしいなんて、知らなかった。これはなんて原始的で、孤独なスポーツなんだろう。だれも彼らを支えることはできない。まわりにどれだけ観客がいても、一緒に練習したチームメイトがいても、あのひとたちはいま、たった一人で、体の機能を全部使って走りつづけている。

 俺が、俺たちが行きたいのは、箱根じゃない。走ることによってだけたどりつける、どこかもっと遠く、深く、美しい場所。いますぐには無理でも、俺はいつか、その場所を見たい。それまでは走りつづける。

 苦しくてもまえに進む力。自分との戦いに挑みつづける勇気。目に見える記録ではなく、自分の限界をさらに超えていくための粘り。

 こんなに苦しくてつらいのに、どうして走りやめることができないのだろう。もっと強く吹いてくる風を感じたいと、体じゅうの細胞が蠢く。


 どうだ、読みたくなっただろう。走る人も走らない人も、みんな人生という先の見えないレースを戦い続けているのだから。

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三浦しをん『風が強く吹いている』
三浦しをん『風が強く吹いている』 新潮社 2006年9月20日発行 ...続きを見る
多趣味が趣味♪
2007/09/17 09:15
風が強く吹いている(三浦しをん)
しまったなぁ;;;あと1週間、早く読むんだった・・・。後悔しても遅いけれど、これはお正月の「箱根駅伝」の前に読むべきだった。昨年から読みたいとは思ってたんだけど、なかなか遭遇できずにいて。これも縁だからと、自然の流れ?にまかせようと思ってたんだけども。やっぱタイミングって大事だよね。これを先に読んでいれば、今年の箱根駅伝はTV齧りつきですんごいドキドキワクワクしながら見れただろうに・・・。あー失敗;;;とっても悔しい。 ...続きを見る
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2007/10/01 18:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。TBどうもありがとうございました。
夢のようなお話ながら、ついついはまり込んで夢中で貪り読んでしまった作品でした。
本の虫さんのレビューを読んでいたら再読したくなって「どうだ、読みたくなっただろう。」に大きく頷いている私がいました。
すずな
2007/09/17 11:23
すずなさん、コメントありがとうございます。
三浦しをんさんの作品を初めて読みましたが、読みながらどんどん引き込まれていきました。
よかったら、また、遊びに来てください。
本の虫
2007/09/18 08:48

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